水害リスクが高い地域での店舗経営

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街の損保案内人

1級FP技能士・CFP
損害保険業界で15年以上の経験を積み、長年の現場経験と専門知識を活かして、スモールビジネス、個人事業主、中小企業のリスク対策について分かりやすくお届けしています。

近年、豪雨や台風による水害が全国的に増加しています。毎年のように大規模な浸水被害が発生し、多くの住宅や事業所が影響を受けました。

特に中小規模の店舗にとっては、商品や設備が水没することで直接的な損害を受けるだけでなく、営業停止や顧客離れなどの間接的な影響も深刻です。また、被害地域が広範囲に及ぶ場合、地域全体の経済活動が停滞することもあります。

今回は店舗の水災リスクと対策について詳しく解説していきます。

水災被害の現状

・平成30年西日本豪雨

西日本を中心に広い範囲で記録的な大雨となった。

7月の月降水量平年値の2倍~4倍になった地域があった。

火災保険の支払保険金は約1,520億円

・令和元年東日本台風(令和元年台風19号)

10月静岡県、関東甲信地方、東北地方を中心に広い範囲で記録的な大雨となった。

火災保険の支払保険金は約4,751億円

・令和2年7月豪雨

7月3日~7月31日にかけての総降水量は、長野県や高知県で2,000ミリを超えた地域があった。

火災保険の支払保険金は約848億円

※参照 損害保険料率算出機構 住宅の水災被害に備えるために

そもそもなぜ水害被害は起きるのか?

毎年のように発生する水害被害の原因は多岐にわたります。なぜこれほどまでに水害が頻発するのか以下の要因を解説していきます。

気候変動

地球温暖化の影響で、短時間に大量の雨が降る「線状降水帯」や「ゲリラ豪雨」が増加しています。また気温が上昇すると台風が大型化し降雨量だけでなく風による被害も拡大しています。近年の台風は進行速度が遅くなり、一つの地域に何時間にわたって豪雨をもたらすケースも増えています。

都市化と排水設備の影響

コンクリートやアスファルトで覆われた都市部では雨水が地面に吸収されにくく、川や排水路に一気に流れ込むため、短時間で氾濫しやすくなっています。また古い排水設備や堤防では、近年の豪雨に対応しきれない場合もあります。都市部では特に、地下街や低地にある施設が被害を受けやすくなっています。

自然の地形

日本は川が多く、山間部から平野部までの高低差が大きい地形が特徴です。そのためひとたび豪雨が降ると、上流から下流まで被害が広がるリスクがあります。また平野部や沿岸部に人口が集中しているため、災害発生時の被害規模も大きくなりやすいのです。

今後の水害被害について

気象庁や専門家によると、気候変動が進むにつれ、今後も水害の頻度や規模が拡大する可能性が高いと予測されています。

例えば、線状降水帯による集中豪雨の発生頻度が増加し、都市部では河川氾濫だけでなく内水氾濫(排水路が詰まり街中に水が溢れる現象)のリスクも懸念されています。

さらに、人口減少や地域経済の縮小により、インフラ整備や維持管理が追いつかない地域も増えており、特に中小規模の商業施設や店舗にとっては対策が急務です。

損保会社の自然災害支払い状況

損害保険会社は毎年、巨額の保険金を自然災害被害に対して支払っていて、その状況について見ていきましょう。

・保険料収入の状況(火災保険)

2018年・・・4,667億円

2019年・・・5,093億円

2020年・・・5,222億円

2021年・・・5,164億円

2022年・・・5,488億円

・保険金支払い状況(自然災害)

2014年・・・520億円

2015年・・・1,108億円

2016年・・・668億円

2017年・・・1,237億円

2018年・・・7,079億円

2019年・・・5,070億円

2020年・・・1,653億円

2021年・・・1,151億円

※参照 損害保険料率算出機構 2023年度火災保険・地震保険の概況

2018年、2019年頃から自然災害の支払額が増加傾向にあります。

•保険料の値上げと契約条件の見直し

災害が増えると、保険料全体を見直さざるを得ないのが現実です。ここ数年間で火災保険料は何度も値上げされ、全体では4割も上昇しています。また長期の契約が難しくなり、最長10年だった契約期間が現在では5年に短縮されました。災害リスクが大きく変化する中で、より現実的な対応をとるための措置です。

水害対策に対して私たちにできることとは?

水害リスクを軽減するために、店舗経営者が今からでもできる具体的な対策についていくつか挙げてみます。

【事前の対策として】

ハザードマップの確認(周辺でどれくらいの水災が発生するか確認)

避難場所を事前に決めておき、避難経路も確認しておく。(全スタッフとも共有する)

・浸水対策(被害を最小限に抑えるための浸水対策アイテムや設備の導入

【水害被害直前の対策として】

止水板を設置する。

・店舗の出入口に土のうや水のうを設置

•移動できそうな機械類を浸水しにくい高い所に移動させる。

•浸水に備えて商品を高い棚に保管する。

自分たちも安全な場所へ避難する。

保険の活用について

火災保険には水災が補償対象に含まれるものと、含まれないものがありますので確認してみましょう。

まとめ 

日々の意識向上

水害リスクは他人事ではありません。地域全体で水害に対する意識を高め、防災に取り組むことが、被害を最小限に抑える鍵となります。

水害リスクが高い地域での店舗経営には、適切な対策が不可欠です。被害を最小限に抑え、万が一の際にも対応できる準備を整えておきましょう。大切なお店を守るために、少しずつ準備を始めてみてはいかがでしょうか?