「健康には気をつけているし、特に体調も悪くないから大丈夫」そう思っていませんか?
しかし、がんは 初期の段階では自覚症状がほとんどない ことが多く、気づいたときには進行しているケースも少なくありません。そのため、定期的ながん検診を受けることが 早期発見・早期治療の鍵 となります。
本記事では、がん検診の重要性や種類、最近のがん保険について解説し、がんになりにくい生活習慣についてもお伝えします。ぜひ、この機会にご自身の健康について考えてみてください。
早期発見と10年生存率とは?
がんは 早期発見できれば高い確率で治る病気です。しかし、日本のがん検診の受診率は 50%未満 と低いのが現状です。「忙しくて時間がない」「まだ若いから大丈夫」といった理由で受診を後回しにする傾向があります。
国立がん研究センターによるがんの10年生存率のデータでは全体で53.5%となっていて、ステージ別では大きな差が出ることが分かっています。定期的ながん検診が早期発見へつながっていきます。
がん種類・ステージ別10年後の生存率(ネット・サバイバル集計)
ネット・サバイバル(がんのみが死因となる場合の生存率)
胃がん
ステージⅠ | 77.6% |
ステージⅡ | 48.9% |
ステージⅢ | 32.0% |
ステージⅣ | 5.9% |
大腸がん
ステージⅠ | 80.4% |
ステージⅡ | 69.8% |
ステージⅢ | 61.2% |
ステージⅣ | 11.1% |
結腸がん
ステージⅠ | 79.5% |
ステージⅡ | 69.8% |
ステージⅢ | 61.8% |
ステージⅣ | 10.6% |
直腸がん
ステージⅠ | 82.1% |
ステージⅡ | 69.3% |
ステージⅢ | 60.1% |
ステージⅣ | 12.3% |
小細胞肺がん
ステージⅠ | 32.5% |
ステージⅡ | 17.1% |
ステージⅢ | 8.5% |
ステージⅣ | 1.2% |
非小細胞肺がん
ステージⅠ | 62.9% |
ステージⅡ | 28.7% |
ステージⅢ | 12.8% |
ステージⅣ | 2.3% |
肝細胞がん
ステージⅠ | 34.0% |
ステージⅡ | 20.5% |
ステージⅢ | 7.4% |
ステージⅣ | 1.0% |
肝内胆管がん
ステージⅠ | 34.3% |
ステージⅡ | 21.6% |
ステージⅢ | 5.0% |
ステージⅣ | 0.8% |
女性乳がん
ステージⅠ | 94.1% |
ステージⅡ | 86.6% |
ステージⅢ | 62.7% |
ステージⅣ | 16.9% |
子宮頸がん
ステージⅠ | 91.6% |
ステージⅡ | 71.8% |
ステージⅢ | 52.5% |
ステージⅣ | 19.0% |
子宮体がん
ステージⅠ | 91.9% |
ステージⅡ | 82.6% |
ステージⅢ | 65.2% |
ステージⅣ | 17.4% |
すい臓がん
ステージⅠ | 31.4% |
ステージⅡ | 10.3% |
ステージⅢ | 3.2% |
ステージⅣ | 0.6% |
腎がん
ステージⅠ | 82.8% |
ステージⅡ | 68.7% |
ステージⅢ | 55.7% |
ステージⅣ | 7.3% |
前立腺がん
ステージⅠ | 93.7% |
ステージⅡ | 95.4% |
ステージⅢ | 87.3% |
ステージⅣ | 37.4% |
膀胱がん
ステージⅠ | 65.4% |
ステージⅡ | 39.1% |
ステージⅢ | 33.6% |
ステージⅣ | 13.9% |
腎う尿管がん
ステージⅠ | 63.0% |
ステージⅡ | 49.5% |
ステージⅢ | 40.2% |
ステージⅣ | 7.4% |
甲状腺がん
ステージⅠ | 97.1% |
ステージⅡ | 89.2% |
ステージⅢ | 95.0% |
ステージⅣ | 74.8% |
女性卵巣がん
ステージⅠ | 85.5% |
ステージⅡ | 61.8% |
ステージⅢ | 29.2% |
ステージⅣ | 14.6% |
胆嚢がん
ステージⅠ | 63.8% |
ステージⅡ | 16.2% |
ステージⅢ | 4.2% |
ステージⅣ | 1.1% |
喉頭がん
ステージⅠ | 82.8% |
ステージⅡ | 68.7% |
ステージⅢ | 55.7% |
ステージⅣ | 7.3% |
参照:国立がん研究センター 院内がん登録2011年10年生存率集計 令和6年1月 ネットサバイバル集計をもとに作成
早期発見につながるがん検診の種類
がん検診には、市町村で実施される「対策型検診」と人間ドックなどの「任意型検診」の2つに大別されます。
<対策型検診>
・地域におけるがん死亡率の減少を目的に導入されている
・有効性が科学的に証明された検診方法に基づいている
・検査費用は公的資金を使用
市町村などで実施される対策型検診の主な検査方法
種類 | 検査項目 | 対象年齢 | 受診間隔 |
---|---|---|---|
胃がん | 胃部エックス線検査 | 50歳以上 (胃部エックス線検査は40歳以上可) | 2年に1回 (胃部エックス線検査は年1回可) |
胃部内視鏡検査 | 50歳以上 | 2年に1回 | |
肺がん | 胸部エックス線検査+喀痰細胞診 | 40歳以上 | 年1回 |
大腸がん | 問診および便潜血検査 | 40歳以上 | 年1回 |
乳がん | 問診およびマンモグラフィー検査 ※視診・触診は推奨しない | 40歳以上 | 2年に1回 |
子宮頸がん | 問診、視診、子宮頸部の細胞診および内診 | 20歳以上 | 2年に1回 |
問診、視診、子宮頸部の細胞診および内診 | 30歳以上 | 2年に1回 | |
問診、視診、およびHPV検査単独法 (住民検診のみ。厚生労働省が示す要件を満たす自治体に限り実施) | 30歳以上 | 5年に一回 |
参照:厚生労働省「がん予防重点健康教育及び検診実施のための指針」
<任意型検診>
・各医療機関が提供するサービス(人間ドックなど)
・自分の考えに合わせてさまざまな種類の検診を選択できる
・検査費用は全額自己負担(健康保険組合や自治体によっては助成金、補助金制度あり)
任意型がん検診には人間ドックや全身のがんを調べることができるPET検査やMRI検査、自身が気になるところを重点的に受診できるメリットがあります。費用は全額自己負担で各医療機関に個別で申込み受診することになっています。
最近のがん保険の特徴
医療技術が進化し、がんの治療法も多様化しています。それに伴い、がん保険もより柔軟に対応できる内容になってきています。
1. 診断一時金タイプ
がんと診断された時点でまとまった金額を受け取れる。
がんの治療には、入通院の治療費の他にも仕事を一時的にセーブしたときの収入減少などがあります。一時金を受け取ることによってお金の不安を解消し、治療に専念できる。
2.治療給付金タイプ
抗がん剤治療、ホルモン剤治療、放射線治療など所定の治療を受けた月ごと予め設定した金額で給付を受けることができる。
がんの治療方法は年々進歩し、入院日数が短縮化し通院による治療が増加しています。長期間の治療では高額療養費の※多数該当となった場合でも毎月の自己負担が積み重なるため大きな負担になってしまいます。こうしたがんの治療に合わせて給付を受けることができる。※(多数該当とは直近12カ月の間に3回以上高額療養費の対象になった場合、4回目以降の自己負担限度額が引き下げられる制度)
3. 自由診療対応タイプ
国内では未承認の抗がん剤などの治療を受けたときは自由診療となり公的医療保険の対象外となります。がん治療の選択肢を広げるために自由診療もカバーできるがん保険も考えておきたい。
がん保険を選ぶポイントとは?
がん保険はお金の不安を少しでも減らし、治療に専念するためのものです。がん保険を選ぶポイントを紹介していきます。
・がん治療では入院日数が短縮化し、治療は通院で行われることが増えている。
・治療が長期化し、高額療養費の多数該当となった場合でも毎月の治療費負担は大きい。
・がん治療で仕事をセーブした際の収入減少に備える。
・差額ベッド代(個室代)は健康保険の対象外で全額自己負担。がん治療で入院する際は治療費だけでなくこうした想定外の費用も考える。
・自由診療(国内では未承認の抗がん剤治療や適応外抗がん剤治療)を利用する可能性も考える。
がんになりにくい体づくり
がん予防については研究から生活習慣を改善することでリスクを下げられることが分かっています。国立がん研究センターをはじめとする研究グループが作成した科学的根拠に根ざしたがん予防ガイドライン「日本人のためのがん予防(5+1)」の習慣を意識して少しでもがんのリスクを低くしていきましょう。
1. 禁煙する
タバコは肺がんをはじめ、さまざまながんのリスクを高めます。禁煙することで、がんの発生率を大幅に下げることができます。
禁煙を難しくしている原因の一つにニコチンによる依存症があります。禁煙開始後ニコチンが体から完全に抜けるまで3日間(72時間)と言われています。この最もつらい3日間を乗り越えることが禁煙のポイントです。
・ガムやアメなどで代用する
・ニコチンパッチ・ニコチンガムを使う
・禁煙外来を利用する
など
2.節酒
お酒は百薬の長と言われることもありますが、飲みすぎは体調が悪くなる原因にもなります。お酒とうまく付き合うには週に数回の休肝日を設ける、食事を取りながら飲む、お酒の合間に水やお茶を一緒に飲むなど工夫することも大切です。「ちょっと物足りない」くらいが体にはちょうどいいのかもしれません。
生活習慣病発症リスクと飲酒量 (純アルコール量)
飲酒量(純アルコール量g) | 疾病名(男性) | 疾病名(女性) |
---|---|---|
少量の飲酒 | 高血圧、胃がん、食道がん | 高血圧、脳卒中(出血性) |
75g/週(11g/日) | 脳卒中(脳梗塞) | |
100g/週(14g/日) | 乳がん | |
150g/週(20g/日) | 脳卒中(出血性)、大腸がん、前立腺がん | 胃がん、大腸がん、肝がん |
300g/週(40g/日) | 脳卒中(脳梗塞)、肺がん(喫煙者) | |
450g/週(60g/日) | 肝がん |
(純アルコール量を20g程度とした場合)
(お酒に含まれる純アルコール量の算出式)
摂取量×アルコール濃度×0.8
(例)ビール500ml アルコール5%
500ml×0.05×0.8=20g
・ビール中瓶(500ml)・・・1本
・日本酒・・・1合
・ウィスキー・ブランデー・・・ダブル(60ml)1杯
・焼酎(25%)・・・グラス半分(100ml)
・ワイン・・・グラス2杯程度
3. バランスの良い食事を心がける
<減塩する>
健康のために減塩が大切と言われますが、味噌汁や漬物、ラーメンなどの塩分が高めの食べ物をよく食べる場合は、無意識のうちにに摂取量が増えているかもしれません。減塩の効果は胃がんの予防、高血圧、循環器疾患のリスクの低下にもつながるとされています。最初は慣れないかもしれませんが「ちょっと薄味」の習慣を心がけましょう。
1日の食塩摂取の目安
厚生労働省策定「日本人の食事摂取基準2020年版」によると
男性7.5g未満
女性6.5g未満 を推奨
<野菜と果物をとる>
野菜と果物ををとることで食道がんのリスクが低くなることが期待されています。胃がんや肺がん(果物のみ)のリスクも減少の可能性があると言われています。急にたくさん食べることも大変なので、朝食に果物をプラスしたり、汁物に野菜を多めに入れるなど無理なく取り入れる工夫もしていきましょう。
1日の野菜と果物摂取の目安
野菜を小鉢5皿(350g)
果物1皿
おおよそ400g
<食べ物や飲み物は冷ましてから>
食べ物や飲み物を熱いままとると、口の中や食堂の粘膜を傷つけてしまい食道がんのリスクが増加するとされています。
食べ物や飲み物は少し冷ましてからとるようにしましょう。
<適度な運動をする>
運動はがん予防にも効果があることが分かっています。「激しい運動をしないと意味がない」と思われがちですが、大切なのは毎日少しでも体を動かすこと。自分のペースで楽しく続けられる運動を見つけましょう。
毎日の運動の目安
18歳~64歳
歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行う。
65歳以上
高齢者については強度を問わず身体活動を毎日40分行う。
<太りすぎも痩せすぎにも注意>
適正体重を維持することが健康にとっても大切です。実は太りすぎも、痩せすぎもがんの死亡リスクを高めてしまうと言われています。BMI値が範囲内になるように体重を管理していきましょう。
BMI値の目安
男性BMI値21~27
女性BMI値21~25
(BMI計算方法)
体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))=BMI
例 身長165cm 体重60kg
60kg÷(1.65m×1.65m)=22
感染もがんの主要な原因です
日本人のがんの原因として、女性で一番、男性でも二番目に多いのが「感染」です。感染症が原因となるがんは、定期的な検査やワクチンで予防できるものも多いとされています。自分の健康を守るためにも、定期的な検査を受け、早めの対策を心がけましょう。
ウィルス・細菌 | がんの種類 |
---|---|
B型・C型肝炎ウイルス | 肝がん |
ヘリコパクター・ピロリ菌 | 胃がん |
ヒトパピローマウイルス(HPV) | 子宮頸がん |
ヒトT細胞白血病ウィルスⅠ型(HTLV-1) | 成人T細胞白血病・リンパ腫 |
感染予防と対策について
・肝炎ウイルス検査を受ける。
・ピロリ菌検査を受ける。
・子宮頸がん検査を定期的に受ける
・該当年齢の人は子宮頸がんのワクチン接種を受ける。
参照:国立がん研究センター 科学的根拠に根ざしたがん予防ガイドライン「日本人のためのがん予防法(5+1)」
早期発見で仕事をずっと続けていける
経営者にとって仕事は生きがいであり、生涯続けていきたいと感じている方も多いと思います。がんは早期に発見できれば、治療の選択肢が広がり、再発や転移のリスク、死亡率も低くなります。
がんと診断されると、「仕事を辞めなければならないのでは?」と不安になる方も多いかもしれません。しかし、最近は がんと診断されても仕事を続けながら治療を行うケース も増えています。
通院治療の選択肢が増えたことや、柔軟な働き方が可能になったこと により、仕事と治療を両立しやすくなっています。
「がん=仕事を辞めなければならない」ではなく、「がん=早期発見すれば治療しながら仕事を続けられる」 という考え方が大切です。
がん検診を「忙しいから」「まだ若いから」と後回しにせず、大好きな仕事を続けていくために定期的ながん検診を心がけましょう。