日々の業務で何気なく使っている電源プラグやコード、気が付けばコンセント周りがゴチャゴチャしていること、ありませんか?
「まさか自分の店舗で火災なんて…」と思っていても、電源部分の出火は身近で発生しています。この記事では、電源火災の原因から具体的な対策、そして火災保険の活用法までを分かりやすく解説します。
1. 電源コード火災とは?
総務省消防庁のデータ※によると、電源コードから出火することは意外と多く、店舗や事務所でも注意が必要です。
※総務省消防庁 電気器具類を原因とする住宅火災の実態調査の結果
コード火災の主な原因と割合には次のようなものがあります。
- 踏みつけ・下敷き 12件、22%
- 素人配線 6件、11%
- 折り曲げや引っ張り 4件、7%
- ジュール熱 3件、5%
- 経年劣化 7件、13%
以下で詳しく見ていきましょう。
①踏みつけ・下敷き
机や椅子に踏まれたり、重いものを載せた台車で踏んでしまったりして断線し出火につながることがあります。
②素人配線や無理な延長
電気工事の専門知識がない状態で無理に配線を増設し、接続箇所から火災が発生するリスクが高まります。
③折り曲げや引っ張り
コードを無理に折り曲げたり引っ張ったりすることで、内部の配線が損傷し、発熱の原因に。
④ジュール熱
コードを束ねた状態で使用したことにより、電気抵抗によってコード内に発生した熱が発散されず出火することがあります。
⑤経年劣化
長年使用されたコードやプラグが劣化して、損傷箇所から出火するリスクが高まります。
2. その他の電源部分火災の原因
トラッキング現象
プラグやコンセント周りでチリやホコリがたまりそこに湿気が加わると電気が流れる状態となり、その熱が電源プラグの刃と刃の間に「トラック」と呼ばれる電気の通り道をつくります。そこから発熱して焦げたり最悪の場合発火する現象です。湿気が多い環境(トイレや洗面所など)では特に注意が必要です。
たこ足配線火災
複数の家電や事務機器を1つのコンセントにタコ足のように繋げることで、過負荷状態になり発火のリスクが高まります。コンセントの数が足りない時は非常に便利ですが、やり過ぎには注意が必要となります。
一般的なコンセントは1500W(15A)に制限されています。一つのコンセントで複数の電源タップを使って使用すると電力量を超えてしまい発火するリスクが高まります。
電源プラグの緩み
コンセントに差し込んだプラグが緩んでいると、接触不良が発生し火災の原因に。
3. 電源火災を防ぐための具体的な対策と注意点
(1) トラッキング現象の防止
•定期的にコンセント周りを掃除してホコリを取り除く。
電源プラグを差し込んだままチリやホコリを拭こうとすると感電する危険がありますので、電源プラグを抜いて掃除するようにしましょう。机や棚の裏側など、普段見えない場所の確認も心掛けていきましょう。
•トラッキング防止処理されているプラグを使用する。
電源プラグの刃の根本に絶縁処理されているものに替えたり、電源プラグに直接後付けできるトラッキング防止カバーなども市販されています。
(2) たこ足配線を安全に利用する
•コンセントや電源タップの定格容量を上回っていないか。
一般的に一つのコンセントにつき定格容量は1500W(15A)まで使うことができますが、知らず知らずのうちにそれを上回っていることもあります。各機器や家電製品の消費電力をよく確認して制限を上回らないように注意しましょう。
事務機器
デスクトップPC・・・150W前後
ノートPC・・・50W前後
スマホ充電・・・15W前後
業務用複合機(コピー機)・・・500W前後
小型プリンター・・・100W前後
家電製品
冷蔵庫・・・200W前後
電子レンジ・・・1000W前後
ポット・・・1000W前後
(3) 電源プラグの緩みに注意
•プラグがしっかり差し込まれているか定期的に確認する。
コンセントとプラグの間に緩みがある状態は、接触不良となり場合によっては発火する危険性があります。ちゃんと奥まで挿し込んであるか、毎日の掃除のときなどに抜けそうなプラグはないか確認するよう心掛けましょう。
(4) コードを束ねて使用しない
•コードを束ねたまま使用すると発熱しやすいため、使用中は広げておく。
コードを束ねた方が見た目はスッキリきれいに見えますが、そのまま使用を続けると束ねた部分が発熱して発火する原因にもなります。コードは広げて使用してください。コードがごちゃごちゃして大変なときはケーブルボックスなどを利用して使いやすくしましょう。
(5) 床にコードを這わせない
•人が通る床にコードを這わせないレイアウトにする。
コードを床に這わせると、人の通りで邪魔になったり、椅子や台車で踏んでしまいコード自体が損傷してしまい火災につながることもあります。コードはなるべく棚の裏や壁などに這わせるように工夫しましょう。どうしても床に這わせざるを得ない場合はコードカバーなど使って損傷しないようにすることも必要となります。
4. 万が一に備える火災保険の活用法
どれだけ気を付けていても、火災事故が起きた場合にどこまで補償してもらえるのか気になるところです。「火災保険で対象になるもの」「注意すべき点」について見ていきましょう。
建物
自己所有の店舗や事務所などの建物
設備・什器
机、商品棚、椅子、パソコン、コピー機などの動産(テナントに入居している場合の内装造作)
商品
店舗で販売している商品や在庫で保管している商品など
休業中の補償
火災などの事故で復旧までの間、お店を休まなければならない場合の補填
火災保険では建物だけでなく、設備什器や商品なども対象になります。いざ使いたい時に「うっかり対象外だった」を防ぐために契約内容をしっかり確認することも大切です。
隣まで延焼してしまった場合はどうなる?
万が一、自分の店舗や事務所から出火して、隣の建物に延焼してしまった場合、どのように補償されるか気になるところです。特に日本では「失火責任法」によって、火災の責任が大きく異なります。以下で延焼時の補償について見ていきましょう。
「失火責任法」とは?
日本では火災による延焼については失火責任法が適用されます。この法律では次のように規定されています。「重大な過失がない限り、火元の責任を負わない」つまり火災を発生させてしまった場合、延焼被害については原則的に法的な賠償責任は負わないとされています。
例外 重大な過失がある場合
例外として重大な過失による火災で隣家や第三者に損害を与えた場合は、法律上の賠償責任が発生し、保険対応や損害賠償の準備が必要になります。
「重大な過失」とは、普通なら注意を払うべき義務を著しく怠った状態を指します。例えば以下のような例が該当する可能性があります。
(例)
・電気の配線や電気機器が損傷していると知りながら修理や交換を怠って使用し続けた。
・ガスや油を扱う際の過失(火をつけたままその場を離れた)
施設賠償責任保険で万が一に備える
重大な過失による延焼で隣接施設や第三者に損害を与えた場合、高額な賠償責任を負うリスクがあります。このよう場合に頼りになるのが施設賠償責任保険です。
火災が発生すると隣接施設にまで被害が拡大することがあります。「保険の加入漏れ」を防ぐために事前に確認しておきましょう。
まとめ
電源コードの火災は店舗経営や周辺施設に大きな被害をもたらすリスクがあります。日常的な点検や管理で、電源コードや配線の劣化、タコ足配線などの火災原因を防ぎましょう。また火災保険や施設賠償責任保険を活用し、万が一の損害や周囲への影響に備えることも重要です。日々の予防と保険による備えで、安心して事業に集中できる環境を整えましょう。